経済学中級者を目指す人のための道しるべ ―はじめての経済学 下巻 伊藤元重


経済学の基礎を抑えたら、次に進むべき道を模索するための本として、本書が役に立つ。

上巻では、主に経済学の基礎であるマクロ経済学ミクロ経済学の視点を紹介していた。 下巻は経済学の応用編として、ミクロ的な視点を交えつつ、主にマクロ経済を中心に紹介している。応用編というだけあって、上巻と比べて専門用語が多くなり、教科書的な色合いが強くなる。本書を読んだら経済学がすべて分かるかというとそんなことはなく、むしろ、やっとスタート地点に立てたという印象である。経済学の基礎は理解できるようになってきたが、もう少しマクロ経済の専門的なことも勉強してみたいな、と思っている人にオススメな本である。

内容は大きくわけて、公共部門、金融システム、人と組織の経済学、国際経済の4項目である。 これら各章ごとの話題は独立しており、どの章から読んでもよい構成になっている。公共部門と国際経済は主に国の役割について述べられており、税金や公共事業、金利、為替、貿易といったキーワードの理解を深める内容である。金融システムは貨幣の理解を通して市場の形成や銀行の役割が焦点となる。人と組織の経済学は、主に日本企業のあり方について述べている。特に日本企業の伝統的な終身雇用についての考え方が学べる。

以上サラッと書いてはみたものの、実際に読んでみるとなかなか歯ごたえのある内容である。本書は各項目の内容のうちのほんの上澄みだけの紹介になっているので、真に理解しようと思ったら、さらに詳しく書かれた内容の本を読む必要がある。本書の最後に、"ブックガイド"として参考文献がのせてあるので、それを頼りにさらに深みにはまることができる。例えていうなら、試食コーナーで試作品をうっかり一口たべてしまったばっかりに、じゃあその商品を買おうかな、という気にさせられる、本書はそんな感じの本である。

目次
6.公共部門の経済学
7.金融システムを理解する
8.人と組織の経済学
9.国際経済を見る目
ブックガイド

はじめての経済学〈下〉 (日経文庫)
4532110157


by lhflux
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