おじさんも受けたい授業―25歳の補習授業 「25歳の補習授業」製作委員会


「私たちはなぜ働くのでしょう?これからの日々を気持ちよく生きるために、私たちは何を身につければいいのでしょう?そして私たちは何を捨てるべきなのでしょう?」(p.5)

こんな基本的な質問に、7人の特別講師が真面目に答えて、それぞれが人生における補習授業をしてくれているのが本書。

目次
1時限目 理科ごころを持つ (講師:福岡伸一
2時限目 チームごころを持つ (講師:糸井重里
3時限目 自分値ごころを持つ (講師:池上彰
4時限目 悩みぬくこころを持つ (講師:姜尚中
5時限目 旅ごころを持つ (講師:養老孟司
6時限目 ブレごころを持つ (講師:太田光
7時限目 群れないこころを持つ (講師:渡邉美樹)

夢のような講師陣。こんな講師陣になら、25歳をとっくに越えてしまったおじさん世代の僕も補習授業を受けてみたい。いや、むしろ、社会に出てから十数年が経ち、心身ともに疲れ果ててしまっている僕たち世代こそ、こうした基本的な質問に立ち返って、自分の人生を考え直す時間が必要なのではないだろうか。

ここでは、個人的に共感するポイントの多かった講師の方を取り上げてみたい。

まず最初は政治学者で『悩む力』の著者である、姜尚中さん。言い古されたことだけれど、「まず自分がどういう人生と生活スタイルを理想や価値観とするのか?そこから仕事を捉え直したほうがいいと思うんです。」(p.95)と言っている。人生の理想、価値観、目標・・・こういったものを常に意識して生きることの大切さは、強調しすぎても強調しすぎることはない。こうしたことは何度でも繰り返し問い直したい。働くということに疲れた時にこそ、こうした根本的な問いかけが心に効いたりするんだよなと思う今日この頃。

そして、「これからの時代、他人との比較ではなく、あくまで身の丈サイズで生きる、それが一番大切なんですよ。」(p.102)とくる。いい仕事やいい暮らし、これって結局他人との比較の中で話をしている。先に見た自分の理想や価値観さえ固まってくれば、例えば六本木ヒルズに住むことを羨んであくせく働くこともなければ、卑屈な気持ちになることもない。自分の見据えるところさえしっかりしていれば、筋の通った生き方、考え方が自然と出来てくるというものだろう。そこまでの境地に至れていない僕は、25歳の若者達と並んで補習授業を受けて正解。

次は解剖学者で『バカの壁』の著者、養老孟司さん。「人生はそれぞれの人の作品。与えられた限られた材料をどれだけ立派な作品に仕上げられるかは、それぞれの人なんですよ。それに役立つことを修行と言うんです。今、修行の感覚が求められている気がします。」(p.134)と説く養老先生は、「修行」という言葉がいっぱい出てくるから『ドラゴンボール』を見るそうで。言っていることは厳しいけれど、親近感沸くなあと違うところで共感してみたり。

個性に固執しないと言って、「仕事とは世間が成り立っていくために必要なもので、それをそれぞれに割り振っているだけの話なんです。だからなんで仕事がないんだろうと思っている人がいたら、それは世間ではなくて、自分が悪いんじゃないですか、ということです。」(p.136)と厳しいお言葉。自分の理想や価値観を持つことが大切だと姜先生のところで言ったけれど、それに捉われて、自分の理想や価値観に合う仕事がないんです、というのは間違っている。社会で生きていく以上、理想や価値観は社会で認められ、仕事として割り振られていなければ成り立たないのだから。厳しいけれど、こういったことを言ってくれる人が、悩める若者には必要なのかもしれない。

最後はワタミ会長で「戦う組織」の作り方 (PHPビジネス新書)の著者、渡邉美樹さん。渡邉先生は、豊かな世代の”社会で生きるモチベーション”を高めるために、一つは「関心を持つこと」、もう一つは「責任を感じること」が必要だと説く。それによって、世界の中の自分を意識し、社会に対する責任の意識を持つことの大切さを強調している。そして、社会で生きるうえで「小さな目標」から設定していくことで、やがて大きな目標が見えてくるようになるものだと言う。

渡邉先生の教えからは、実践ポイントを一つ。それは設定した目標(課題)が現在の自分の能力ではクリアできない際に必要な「学び」の方法。具体的には、「周りの人たちのいいところを中心に見て、いいところを真似ること」と、「古典と呼ばれるようなきちんとした本を、思考をめぐらせながら読むこと」、「日記を書き、自分自身の”本当”と向き合うために1日の自分を振り返ること」。人生における「学び」はいくつになったって大切。ただし、ブログで日記をつけることは渡邉先生のいうところの「学び」には繋がらないのでご留意を。

25歳というのは働き始めて数年経った若者に向けたメッセージという意味合いなのだろうけれど、十数年を経過した僕にも示唆に富んだ内容が多く、ためになる一冊だった。ターゲットの若者は勿論のこと、後進を指導する立場にある方などにも読んでいただければ得るところがあると思う。人生において必ずや考えなければならないテーマ、この機に是非。
25歳の補習授業―学校で教わらなかったこれからいちばん大切なこと
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by Taka@中小企業診断士(業務休止中)
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