経済初心者から一歩を踏み出すための経済教室 ― はじめての経済学 上 伊藤元重


本格的に経済学の勉強をはじめてみようという心意気のある人にオススメな本である。

本書は、導入部の第1章、マクロ経済学の第2章と第3章、ミクロ経済学の第4章と第5章という大きく分けて3部構成になっている。 導入部では、なぜ経済学というものが必要かということを、為替や金利といった経済用語を交えて紹介する。 経済についてよく分かっていない人は、まずこの導入部を読んでみて、本書(上巻)とそれに続く下巻を買うかどうか決めた方がよい。タイトルにある"はじめて"という言葉にうっかり惑わされると、きっと後悔することになると思う。

導入部の次はマクロ経済、さらにはミクロ経済と続く。厳密にいうと、マクロ経済学ミクロ経済学とは明確に分類できないらしい。 ただし、本書の言葉を使って大まかにいうと、「マクロ経済学は一国経済の全体像を捉える枠組みであり、ミクロ経済学は個人や企業の経済的な意志決定・選択を解明する枠組みである」(p.13) となる. かみ砕くと、マクロ経済は国家戦略であり、ミクロ経済は個人戦略となる。

マクロ経済にみる国家戦略の最大のポイントは金利である(と思う)。国は金利をコントロールすることで、間接的に世界経済を動かす。例えば、日本が金利を上げると、ドルよりも円の魅力が上がることで円買いが進み、円高傾向になる可能性が高い。ただし、日本経済にとっては、金利が上がることで企業は借金をしにくくなり、日本経済が回らなくなってしまうかもしれない。そうなると円安傾向になる可能性もある。経済の行方、例えば日経平均株価の推移を正確に予測することはまずできないので、金利をどうするかという問題は非常に重要な要素であることに間違いはない。金利をどのタイミングで上げるまたは下げるかということを判断するのはなかなか難しく、マクロ経済の指数となる国内総生産GDP)などをみることで、経済の判断を行うことになる。

ミクロ経済では、市場原理が基本となる。個人の視点に立った時、あるモノを売りたい人と買いたい人がいる。売りたい人はできるだけ高い値段で売りたいし、買いたい人はできるだけ安い値段で買いたい。これら両者の気持ちを図示したのが、供給曲線と需要曲線である。これら両曲線の交点が、モノの価格となる。話しは単純なのであるが、よく理解しようとすると奥が深い。大切なポイントは、特に政治介入などをしなくても、市場原理に任せれば適切な価格が決まるということである。ミクロ経済のもうひとつの視点として、本書ではゲーム理論を紹介している。ゲーム理論については、いろいろなところで説明があると思うので、その要点だけを言うと、相手の戦略を考慮して自分の戦略を決める方法となる。

著者の伊藤元重氏というと、テレビ番組ワールド・ビジネス・サテライトにも時々出演しているところを見かける著名人である。彼は東大教授であるためか、本書も大学1年生向けに書かれた内容のように感じた。私のような、経済学を独学で学んでいる初学者にとっては、本書はちょっと難しい内容であるものの、がんばって読むと経済学の理解が一歩進んだような気にさせてもらえる。普段、日経新聞を読み、ワールド・ビジネス・サテライトを見ていて、ちょっと経済学について学んでみようかな、という人は本書が勉強になると思う。

目次
1.経済学とは何か
2.経済を大づかみに捉えると―マクロ経済学の基本
3.日本経済を変えた三つの分岐点―マクロの視点で考える
4.市場の原理を理解する―ミクロ経済学の基本
5.ゲーム理論の考え方

はじめての経済学〈上〉 (日経文庫)
4532110149


by lhflux
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