まだ図で考えていないのですか?―図で考えるとすべてまとまる 村井瑞枝


図を使って考えることの有効性については、随分前から言われていたと思うのだが、最近になってまたもやその気運というかブームの兆しが見られる。色々なことを図示化することは、ビジネスの場では絶対的に必要なスキルだと個人的には思っているので、そういった動きに特に反対する気持ちはないけれど。

本書の著者である村井さんの経歴は、こうした図で考えることが得意であることを想起させるものだ。世界トップクラスのアートスクールで学び、JPモルガンボストンコンサルティンググループにてキャリアを積んだ異色のコンサルタント。そもそも、こうした図解のスキルというのは、戦略系コンサルティング会社のプレゼンによく見られるもの。そうした会社で10,000以上ものプレゼン資料を作成する中で培われてきたスキルが実践的であることは容易に想像できる。

本書はそんな著者による図解のススメとでも言うべき本であり、超入門書である。

村井さんは図で考えることのメリットとして5つ挙げている。

1. 図は頭を整理する
2. 図は問題解決能力を高める
3. 図を使うと仕事が早くなる
4. 図は効果的に相手に伝える
5. 図はあらゆる仕事の場面で役に立つ

打ち合わせなどをしていて、その場でさっと打ち合わせの要点を図(ロジックツリーや表など)に整理したとき、「そうそう!こういうことだよ!」となった経験はないだろうか。一度、こうした経験をすれば、図で考えることの威力は容易に感じ取っていただけると思う。そうでない方もご安心を。本書の5章で描かれているストーリー仕立ての用例説明でも、十分に威力を汲み取ることができるようになっている。

未だにこうした本が売れ、雑誌でも特集されるということはビジネスの場で、まだまだ図で考えるということが浸透していないということなのだろうが、実に勿体無いことだと思う。

図を描けない人の多くは、「図」と「絵」が心理的な部分で一緒になっているということもあるようだが、村井さんも書いているように、「図」は「絵」とは違う。

僕も含め、「絵」というものに抵抗感がある人は意外に多いと思う。僕の場合は本当に下手なので、絵を描くことは恥ずかしくて仕方ないのだが、それでも図は描ける。確かに、プレゼン資料などで綺麗に仕上げようと思うと配色の問題などで、多少の絵心が要求されることはあるけれど、考えを整理し、伝えるという根本的で、かつ最も威力を発揮する場面では必要ない。

「図」は、丸や三角、四角だけの組み合わせでも立派に成り立ち得るということは大切なポイント。絵心などなくても、きちんと考えが整理され、明確に内容が示された「図」は、それだけで綺麗に見えてくる場合もあるから不思議なものだ。

そんなことよりも寧ろ、考え方を整理するに当たって適切な図を用いているか、ということの方がよほど重要であり、本書では基本パターンとして7つの「図」を教えている。

1. 因数分解のパターン
2. マトリックスのパターン
3. 表のパターン
4. 比較のパターン
5. 線表のパターン
6. コンセプトのパターン
7. プロセスのパターン

具体例は本書に当たってほしいが、どうだろう、絵心の必要とされるようなパターンはないのではないだろうか・・・。

要は、こうした基本的なパターンをしっかりと押さえ、場面場面に合った適切なパターンを用いて図示化できるかどうか、ということであり、これについて慣れも必要なので、どんどん描いていくべきである。マインドマップなども図示化の手法の一つだと思うが、本書で紹介されているような、シンプルな図形のみで成り立つような図こそ、まずは身につけるべきスキルだと思うし、最も抵抗感が少ない「図」であると思う。

本書について、僕は「超入門書」と書いたけれど、それほどに分かりやすく図で考えることの効用を伝えてくれているし、現時点で「図」を使えていない人にとって敷居の低い導入経路となり得る本。外資系戦略系コンサルティングファーム出身者とは思えないほど、易しい言葉で書かれている点もポイントが高いところ。

特に若手ビジネスパーソンを中心に、あまり図に描いて考える習慣のない人には是非読んでいただきたい。春になって「新入社員に読ませたい本は?」と聞かれたら候補に挙げたい一冊。ただし、その反面で普段から図を描いているような方には物足りないと思われるのでご留意を。
図で考えるとすべてまとまる
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by Taka@中小企業診断士(業務休止中)
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