長寿社会は本当にいいことなのか―寿命はどこまで延ばせるか? 池田清彦


不老不死を願った人類は、それを得ることにより幸福を得ることができるのか。

目次
はじめに
第一章 寿命の起源:生命の始まりはどこにあるのか
第二章 生物にとって寿命とは何か:寿命を持つことの損得
第三章 ヒトの寿命は何で決まるのか
第四章 ヒトの寿命は延ばせるか
第五章 長寿社会は善なのか

不老不死を願う方って、結構多いのではないでしょうか。まぁ、普通はそんな簡単に自分の人生の終焉を迎えたくはないわけで、どうにかして、一日でも長く元気に生きていたいと思うのは、人間の真理として、当然のことだろうと思います。
だったら、その「寿命」をもっと延ばせばいいじゃないか。そんな発想から論じている、今回のこのテーマは、結構、興味深く読ませていただいた一冊だったと思います。
ただ単に「死にたくない」という思いから、不老不死を願うのでしょうが、本当にそれでいいのか。そんなこと、今まで生きてきて考えたこともないですから、ちょっとビックリした内容だったのかもしれません。
「寿命」をどのようにしたら延ばすことができるかの議論の前に、そもそも「寿命」って何なんだろう。そんな疑問も湧いてきます。
確かに、「寿命」って最初から決められたものでもなさそうなんですが、平均寿命みたいに、だいたい最初から分かっているものかもしれません。
ヒトの「寿命」、犬や猫の「寿命」、昆虫の「寿命」、ライオンやトラなど野生動物の「寿命」、バクテリアの「寿命」、サンゴ礁の「寿命」、宇宙に浮かぶ星たちの「寿命」、地球の「寿命」
それらの「寿命」って、いったいどのようにして決められているんでしょうかねぇ。
本の中では、ヒトの「寿命」について、遺伝子の話が出てきます。ヒトを「死」に追いやる「ガン細胞」の話も出てくるのですが、ガンって、なかなか解明されない病気の一つだと思っていましたが、結構、いろんなことが分かっているんですね。
突然変異で発生するとか、テロメアという、遺伝子の末端部分が、「正常細胞」は、だんだんと減ってくるのに対して、「ガン細胞」は、テロメラーゼの活性がよく、テロメアが再生することとか。
科学の詳細については分かりませんが、いろんな研究で分かっていることも多いんだなぁって感じました。
数年前に話題になった、クローン羊のドリーのつくりかたなんて絵もあって、このままだと、そのうちにヒトの「寿命」も研究によって延ばすことができるんじゃないか。そんな風に感じたりもします。
でも、大事なことは「寿命」を延ばすことではないのではないでしょうか。確かに、私も今すぐに自分の「死」を迎えたくはありません。だからといって、何も考えずに生きていたいとも思いません。やっぱり、生きている間に何かを残したい。何かを成し遂げたいと思うからこそ、ヒトは生きていたいのではないでしょうか。
勉強して、いろんなことを学びたい。旅に出て、いろんな土地に行ってみたい。可愛いあの娘と、いつかデートしてみたい。大好きなロックバンドのコンサートに行ってみたい。子どもが無事に成長するよう子育てをしていきたい。大事に育ててくれた両親のために、家を建ててみたい。オーディションに合格して、芸能界にデビューしたい。本を書いて、世の中にいい影響を与えたい。ビジネスでひと山あてて、大儲けしたい。みんなの力になりたい。
想いは人それぞれでしょうが、心の中に何か持っているものだと思います。でもどうでしょうか。ただ単に「寿命」を延ばせばいいって問題でしょうか。
著書の中にも書かれていますが、「寿命」が延びるということは、社会全体のサイクルも延びるということです。定年も60歳とかじゃなく70歳や80歳に。出世だって遅くなります。60歳で課長、70歳で部長昇進なんてこともめずらしくなくなります。
仮に、ヒトの「寿命」が300歳になったとして、サラリーマンであれば、いったい何歳まで会社にコキ使われなければならないでしょうか。考えただけで、ゾッとしますね。
最近、「時間管理」の著書がよく書店に並んでいます。なぜそんなに「時間管理」が問われているかというと、個人的には、人生はそんなに長くはないからだと思います。
言い方を変えれば、人生は期限か決まっているから、その中で何ができるか、どう考えれば効率よくこなしていけるか。私たちは、もっともっと考える必要があるのかもしれません。
もし、「寿命」が300歳とかだったら、今以上に、だらけた人生を過ごしてしまっていて、際限なく時間もあるから、「あとでいいや」とか言いながら、結局何もできずに終わってしまうのではないでしょうか。
何でもあればいいって問題でもなさそうですね。
「ヒトの死」は、本当に悲しいものです。私も、仕事をしているときに大切な方の「死」を目の前にしたこともあります。他人の「死」を目の前にしても、何もしてあげられない自分がいて、そんな非力さをふがいなく思ったこともありました。
だから、「寿命はどこまで延ばせるか?」なんて考えず、与えられた「今」という時間を、もっと精一杯生き抜いていこうと、そんな気持ちにさせてくれた一冊でした。
うん、そう、精一杯生きていこうって。
寿命はどこまで延ばせるか? (PHPサイエンス・ワールド新書)
4569772072


byゴリクン。
にほんブログ村 本ブログ ビジネス書へ 応援よろしくお願いします!