経済学の基本となる思考法を学ぶ―こんなに使える経済学 大竹文雄


経済学的思考とは何かを初心者でも分かるよう説明して欲しい、今回はそんな要望に答えてくれる本である.
日経ビジネスのコラムで経済学的思考の雰囲気を掴むのに適した本として、飯田泰之氏が本書を薦めていた. 実際に読んでみると、経済学の知識をほとんど持ち合わせていない私のような初学者にはちょうどよい本であった.

目次
第1章: なぜあなたは太り、あの人はやせるのか
第2章: 教師の質はなぜ低下したのか
第3章: セット販売商品はお買い得か
第4章: 銀行はなぜ担保を取るのか
第5章: お金の節約が効率を悪化させる
第6章: 解雇規制は労働者を守ったのか

本書で取り扱う内容は、肥満や教育など、広く日常生活に関わる問題を経済学的に考えるとどのように捉えることができるかという視点を紹介している. この視点というのは、自分さえよければいいという考え方ではなく、みんなが満足できる方法を模索するという切り口である. "序章"と"あとがき"に、経済に対する一般人のイメージと経済学の概念についてうまくまとめているので、購入するか迷ったら、まずこの部分をチェックしてみることをお勧めしたい.
以下、この本で説明する経済学とは何かを私の言葉でまとめてみる.
経済学と聞くと、お金の儲け方や株価の変動予測などを行う学問だとイメージする人は多い. 私もそうであった. しかしこの本によれば、経済学というのは、人間の欲をうまく設計して社会全体が豊かになるような仕組みを考える学問であると述べている. つまり、自分一人だけが得すればよい、というのではなく、みんなが得をするにはどうすればよいか、を考える学問である. 損得の受けとめ方は人の性格によるところが強く、それを計ることは難しい. そこでその損得をお金で勘定することで数値化し、みんなが得をするシステムを考えるのである.
ただし、注意しなければならないのは、経済学を正確に理解したからといって、すべての人がより望ましくなるような細かい政策や制度はそう簡単に求まらない点である. というのも、経済学でたてた仮定が常に正しいとは限らないからである.
日本人の悪い癖として、すぐに正解を一つに決めようとするところがある. しかし、世の中には何が正しいのか分からないことの方が多い. まずは仮説をたて、その仮説に基づいて行動し、間違いをみつけたらその都度、修正しながら正解に近づく努力を常にする. 学問とはそういうものだということを、この本を読んで改めて気づかされた.
こんなに使える経済学―肥満から出世まで (ちくま新書)
大竹 文雄
4480064001


by lhflux
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