人生を振り返るべき時に読む本―一日一生 酒井雄哉

一日一生 (朝日新書)
4022732385

親父が倒れた。
実家を出てから10年以上たつが、今の親父にはあの頃の姿は微塵も残っていなかった。
髪は薄くなり、顔にはしみが増え、目は虚ろ、大きかった手はしわだらけ、
チューブにつながれやつれた姿がベッドに横たわっていた。
言葉が出なかった。
言葉を発すると、涙が出そうになった。
生と死、老いについて考えさせられた今回の一件は、生きることに走り続けている私にとって、大きな影響を及ぼした。

幼いころの親が本気で心配してくれたり、おぶって病院まで走ってくれたり、そういうことは、いつまでも忘れないもんだな。ふれあいとか絆とか、肌の感覚でもって覚えているものなのかもしれない。

「一日一生」と題される本書は、天台宗大阿闍梨酒井雄哉さんが書かれた人生訓。酒井さんは、千日回峰行という荒行を二度も達成された比叡山飯室谷不動長寿院の住職であり、現在も国内や世界各地を巡礼されています。
千日回峰行とは、

半開の蓮の葉をかたどったひのき笠を頭に、白装束に草履履き、死出紐を肩に掛け宝剣を腰にした姿が特徴。行を挫折したら自害するという覚悟のいでたちだ。初年から三年は深夜から朝にかけ、比叡山中の二百数十ヵ所を巡拝しながら、一日30〜40キロの道程を毎年100日間歩く。四、五年目は毎年200日、計700日の回峰をする。
700日の回峰行を終えると、不動堂に九日間こもり、断食、断水、不眠、不臥で不動明王真言を10万回唱える「堂入り」という行が課せられる。終盤になると、瞳孔が開き死臭が漂うともいわれる非常に過酷なものだ。(略)

今日一日を生きるために、家族を養うために、自分の人生を捧げた親父。そんな親父に育てられた私も、過去や未来に必要以上にすがらず、今この一時を考えられる生き方が出来るようになりたい。


by具太郎
にほんブログ村 本ブログ ビジネス書へ