稼ぐ「デザイン力!」 大口二郎

稼ぐ「デザイン力!」―経営者・管理職のためのデザイン戦略入門
稼ぐ「デザイン力!」―経営者・管理職のためのデザイン戦略入門大口 二郎

アーク出版 2009-05
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おすすめ平均 star
starわかりやすく、リアルな内容に共感
starデザインと経営の関係を平明に解読した良著

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書評を書いていていつも悩むことは・・・・・・。
それは、「おもしろい」本を如何にして読者の方に伝えれば良いかということ。「つまらない」本なら「つまらない!」とザックリ切ってしまえば簡単に伝わりますが、「おもしろい」本を「おもしろい!」と言ってもどこまで信用されるかが難しいところです。
実は今回の本もどう紹介すれば「おもしろさ」が伝わるか悩みましたが、結局「なるようになれ!」と開き直り、筆をとります。
人は見た目が9割」と言われるように、「見た目」=「デザイン力」かと思ったら、それは浅はかな考えでした。デザインの「見た目」である色や形は「スタイリング」であり、あくまでも「デザイン」の一部とのこと。

デザインとは「企業の強みを色や形に表したもの」

つまり、デザインで注視すべき箇所は「見た目」ではなく、デザインが語りかけている「中身」なのである。これは私自身と同じで、「見た目より中身で勝負!」ですわ。(ちょっと違うか・・・)
ところで、まず注意して頂きたいのが、本書は「デザイナー」のための本ではなく「経営者・管理職」のための本というところ。私自身は「企業デザイン」に絡んだ役職ではないので、デザイン部門で日常何が起こっているのか見当もつきません。しかし、デザイナー視点で書かれているということが、「デザイン」そのものに直接携わるわけではないが、プロジェクトの参加者であったり、決定権を持っていたりする人には、目からウロコな情報があるのは間違いないでしょう。
本書は、「デザイン力」とはどういうものなのかを読者に理解してもらいやすいように、いくつかの代表的な企業を取り上げています。トヨタやアップル、任天堂など・・・、どれも私が所有しているものばかりです。どうも私は「デザイン」に弱いようです。
その中でも今回は「任天堂」に触れてみたいと思います。オレ的に。
任天堂と言えば「ファミコン」が大ブレイクし、家庭用ゲーム機業界を牽引しましたが、その後ソニーの「プレイステーション」「プレイステーション2」に押され、任天堂の「Nintendo64」「ゲームキューブ」は散々たる結果となりました。私の記憶によれば、当時の力関係は、ソニーセガ任天堂だった気がします。
しかし、任天堂の「ユーザーはゲームに高性能を求めているのではなく、ゲーム本来の楽しみを求めている」というスタンス(多分)による開発により、自社の「強み」を「デザイン」することが出来ました。それが、「ニンテンドーDS」と「Wii」です。
この二機種が発売される前は、ゲームユーザーと言えば「ヘビーユーザー」か「ライトユーザー」という二つの括りだけでした。「ヘビー」と言えば、「オタク」と呼んでも過言でない人々のことを。「ライト」と言えば、「ドラクエ」「FF」しかゲームはやらないという人々のことを。そんなゲームユーザー層に任天堂は新たな層を作ったのです。
それは、「脳トレ」に始まり、「Wiiスポーツ」や「WiiFit」などで、今までゲームをやったことのなかった高年齢層のユーザーの獲得でした。そして肝心の業績と言えば、2009年3月期連結決算で過去最高益を記録し、本当に羨ましいかぎりです。
そんな訳で、長々と脱線しまくりましたが、「デザインとは何ぞや?」ということが「企業経営戦略の角度」から学ぶことができる久々のヒット作でした。

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